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塩味ビッテン
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若き天才金庫破りの物語なのですが、ハードな「犯罪小説」と泣ける「純愛・青春小説」の見事な融合。ラストには涙という美味しい小説。激お勧め!!!
「解錠師」こんな日本語あるんでしょうかね。ワープロ変換では「開錠」が出てきますが・・と思って調べてみましたところ『「解錠」というのは、鍵を破壊す ることなく開けること。「開錠」というのは、鍵を破壊して開けることも含み、「解錠」を含む』。なるほどなるほど。本書の原題は”The Lock Artist"でして、乱暴な金庫破りではないので「解錠師」でいいんですね。金庫破りはsafebreaker,錠前師はlocksmithですので、 錠前破りはlockbreakerとなるところでしょうが、あくまでも破壊せずに錠前をあけることに美意識を持つ主人公はLock Artistということです。そこまでで考えると「解錠師」という日本語訳はあまりにも芸がない。せめて「錠前職人」とか「鍵芸人の記録(旅芸人のパク リ)」「解錠芸術家(そのままやんか)」「華麗なる錠前師(ギャツビーのパクリ、塩味も芸がないなあ)」なんて気の聞いた題名にしてほしかったですよ。

 邦題についてひとしきり塩を振ったところですが、本小説の内容は実に良いです。泣けてきます。若き天才金庫破りの物語なのですが、ハードな「犯罪小説」と泣ける「純愛・青春小説」の合体で、「ヒートアイランド(垣根涼介)」っぽいスリリングな展開です。

 8歳のときに負った不幸なトラウマのため、一言も話すことのできなくなった少年マイクは、18歳のときに解錠師(金庫破り)となります。なぜ、どうやっ て一流の解錠師となったのかその顛末が、マイク17歳の高校生時代の話と、18歳で犯罪者となって金庫を破る話とで交互に語られます。キーワードはマイク 少年の「恋心」。犯罪者への道が恋人を救うためであるところが泣かせます。

 ある事件(これも最後には明かされるのですが泣けます)をきっかけに、言葉を話せなくなったマイク少年。周囲は同情するけれど、誰も気持ちを分かってく れません。そんな彼には絵画の才能と解錠の才能の2つが備わっていました。高校生の彼が、いたずらで勝手口の鍵を開けて侵入した豪邸に住む少女・アメリア に恋をします。この侵入は発覚して保護観察の身になるマイクですが、アメリアへの気持ちは募るばかり。犯罪者で口が聞けない貧乏人の自分と金持ちの令嬢で は身分が違いすぎますが、マイクはもうひとつの特技絵を描くことと、解錠して何度も彼女の家に侵入することで気持ちを通わせることに成功します。そして幸 せなことにアメリアだけが自分の気持ちを理解してくれる存在であることを確認できました。ここまでの青春偏では幾多の試練を誠実に乗り切るマイクに深く共 鳴いたします。
 この後、犯罪組織に足を突っ込むことになるのですが、これもアメリアを救うためです。しかし彼女はこのことを知りません。アメリカ中を転々とし、闇の世 界で天才金庫破りとして懸命に生きるマイクです。作中の「解錠」シーンではその緊張感と緊迫感が秀逸に表現されています。訳者の越前俊弥さんも題名の翻訳 はいまひとつですが、内容は大変読みやすく上手い訳が付けられています。
 
 マイクには「奇跡の少年」「ミルフォードの声なし」「金の卵」「若きゴースト」「天才解錠師」とさまざまな呼び名が付けられます。それぞれの年代の事件にまつわる名前なのですが、そのエピソードが上手に関連付けられて読者を飽きさせることがありません。

 結局18歳で逮捕されて10年間の刑務所暮らしとなるマイクですが、ラストに希望の灯が用意されていて・・・。

 題名の日本語訳が気に入らないので0.5点引きですが大お勧めの一冊です。
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塩味ビッテン
塩味ビッテン さん本が好き!1級(書評数:2220 件)

「本を褒めるときは大きな声で、貶すときはもっと大きな声で!!」を金科玉条とした塩味レビューがモットーでございます。

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